JR鷹取駅北側駅前広場リニューアル_すごす、たのしむ、マチのリビング

関西造園土木・ofa設計施工共同体,兵庫県神戸市,2022.03
対象面積約2,000m2,駅前広場
施工:関西造園土木株式会社
設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川)
ランドスケープ:環境デザイン素地
写真:ofa

阪神淡路大震災で大きな被害を受けたJR鷹取工場跡を、市街地として形成(平成8年震災復興土地区画整理事業決定)する中で整備された、駅前広場のリニューアルです。広場完成(平成17年)から15年がたち、街はほぼ一通りの開発がなされ、住宅や小学校・店舗の混在するエリアとして人口が増える反面、駅前広場は通り過ぎる場所になっていました。この駅前広場プロポーザルに、広場を「すごす、たのしむ、マチのリビング」としてリニューアルすることを提案して選定され、実現しました。

環境を丁寧に読み解き、できるだけ今あるものを使いながら、ベンチにもテーブルにもなる傾斜のあるリングと潤いある緑を合わせて、気持ちの良い居場所をつくりました。誰もが思い思いにゆったりと過ごす場所を見つけられる、快適なマチのリビングのような広場です。ゆったりした曲線のリングが街の表情を和らげ、緑の重なりが、駅前から街、山並みへ連続していきます。

広場全体に大小のひとつづつ異なる形のリングをレイアウトしました。それぞれのリングが影響し合い、空間にリズムを作りながら、流れと溜まりの場所と広場の一体的なイメージを生み出しています。リングの中には芝や花の咲く植物、樹木をレイアウトしたり、既存樹を囲むようにデザインして、緑と居場所の関係を作っています。既存のベンチも残して使い、リングと一緒に使えるように木陰とのバランスを見ながら配置しました。

リングには、テーブルや背もたれを設えました。コーヒーを飲んだり、本を読んだり、ゆっくり時間を過ごすための街の家具です。かつて、JR鷹取工場があったことを伝える線路や鉄輪を模した既存の舗装パータンを継承し、リングの中に舗装を再現しました。地域の歴史を伝える継承のデザインです。

リングはゆるい傾斜による高低差を持ち、椅子からテーブルまでいろいろな用途に使えます。内部は子供の遊びに使えるよう、芝を開く場所を作っています。保育所の迎えの前後や、待ち合わせ、休憩、ランチ、読書、仕事、宿題など、目的によっていろいろな人が共存できます。

リングの動きと配置によって大きく開けた駅前に密度が生まれ、既存樹にリングの植栽が重なって風にゆれる、緑の濃淡のある風景になりました。通り過ぎるだけだった駅前が、気に入った場所を見つけて時間を過ごせる、マチのリビングのような広場になればと思います。

このプロジェクトは、駅前広場の交通計画見直しを含めた本整備の前段としてのプレリニューアルとして実施されました。ofaでは本整備に向けた構想から基本計画、住民アンケート、基本設計も担当しました。引き続き本整備の検討が進められる予定です。