川東公園休憩スペース

 
基本実施設計,岡山県真庭市,2023.03
公園整備基本構想(街区公園):対象面積約6,000m2
東屋:新築,木(CLT+在来)造,平屋建,延面積16.8m2
統括意匠設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川)
構造設計:株式会社MID研究所
監理:真庭市
施工:株式会社タブチ
写真:ofa

ウッドデザイン賞優秀賞林野庁長官賞_ハートフルデザイン部門受賞  (日本ウッドデザイン協会)(旭川・りんくるラインを含む一連の環境として)

真庭市落合地域において、地域住民の憩いの場として利用されている公園の全体景観整備構想と休憩スペースを設計しました。旭川の左岸側にあるこの公園は、古くから桜の名所としてお花見や出初式で賑わい、最近は彼岸花の群生でも知られ、秋には多くの人が写真撮影などを楽しみに訪れます。全体構想では、近年整備された川沿いのサイクリングロード、旭川・りんくるラインに接する大きな公園であることから、サイクリングロードの南の拠点としても位置づけました。


旭川に面して建つ東屋は、たくさんの人が川の眺めを楽しめるように、流れに沿って長く伸びるプランとしました。一枚の大版CLT(直行集成板)を、ルーバーのように配置したヒノキの柱で空へ差上げる、シンプルな構成です。


屋根は対角に勾配をとりました。空間に高低の変化を生みながら旭川に向かって開き、川沿いのびのびとした眺めを楽しめます。


足元には大きな複数のベンチを配して、居場所を屋根下から川に向かって広げました。旭川・りんくるライン沿いには、4年前にofaで設計した家具(ベンチやテーブル、サイン)が点在しており、この公園にも設えられています。(ひととまちの魅力をつなぐ「かわのみち」) 今回のベンチもこれらと共通のまるい曲線のデザインとして、川東公園の印象をサイクリングロード全体につなぎ、一連のプロジェクトとしての一体感をつくっています。


CLTはスギヒノキのハイブリッド、柱、ベンチはヒノキです。真庭市はヒノキの産地であり、ここでも地域産のヒノキを使用しています。地域産ヒノキのそのままの色合いを活かせるよう、ベンチも東屋もクリア塗装としました。サイズや高さ、視線の向きが異なるベンチが複数あることで、いくつかのグループが気兼ねなく一緒に過ごすことができます。


ルーバー状の柱はどの方向からも見通しを遮らず、川や桜の景色を透かして溶け込み、死角を作らない安全性も備えます。


公園の大部分はひろびろとした多目的広場となっており、地域利用のグランドゴルフなどが活発に行われています。小さな東屋ですが、普段の地域利用と、桜や彼岸花の観光利用の方が共存できる、居場所の多さと多面性をもつ空間です。


ベンチは荷物を置いてゆったり座れる大きさと奥行き、高さのバリエーションがあり居場所を選べる、だれにも使いやすい休憩スペースです。


この場所の役割を、身近な公園として、またサイクリングロードに沿った近隣地区をつなぐ場所、観光の来訪者を迎える場所という多様なスケールで位置づける中で、休憩スペースの整備は、近くからも遠くからも、行きたい・過ごしたい・使いたい、目的地になる公園リニューアルをめざした第一歩です。


公園内で4年前にデザインしたベンチやテーブル、サインは、木の色も落ち着いて穏やかに風景になじんでいます。その際にサイクリングロードのビジョンとした「ひととまちの魅力をつなぐ〈かわのみち〉」が、少しずつ育ち続けています。

Bank branch office project

事務所(銀行の支店)、木造、2階建、約500m2

ヒノキの森のある街の銀行支店新築のプロジェクトです。

かつて神社の参道でにぎわった茶屋のように、地域のコミュニケーションの核としてラウンジ部分を開き、活動や交流を醸成します。

ラウンジは、一般製材の組み合わせの柱梁によって、ヒノキの森をイメージする吹抜の木の空間です。建築によって、地域産業を後押しし木の文化を発展させる、ビジョンを体現するデザインです。

地域防災と環境配慮に積極的に取り組む、レリジエンス強化型ZEBプロジェクトとして計画しました。

JR鷹取駅北側駅前広場リニューアル_すごす、たのしむ、マチのリビング

関西造園土木・ofa設計施工共同体,兵庫県神戸市,2022.03
対象面積約2,000m2,駅前広場
施工:関西造園土木株式会社
設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川)
ランドスケープ:環境デザイン素地
写真:ofa

阪神淡路大震災で大きな被害を受けたJR鷹取工場跡を、市街地として形成(平成8年震災復興土地区画整理事業決定)する中で整備された、駅前広場のリニューアルです。広場完成(平成17年)から15年がたち、街はほぼ一通りの開発がなされ、住宅や小学校・店舗の混在するエリアとして人口が増える反面、駅前広場は通り過ぎる場所になっていました。この駅前広場プロポーザルに、広場を「すごす、たのしむ、マチのリビング」としてリニューアルすることを提案して選定され、実現しました。

環境を丁寧に読み解き、できるだけ今あるものを使いながら、ベンチにもテーブルにもなる傾斜のあるリングと潤いある緑を合わせて、気持ちの良い居場所をつくりました。誰もが思い思いにゆったりと過ごす場所を見つけられる、快適なマチのリビングのような広場です。ゆったりした曲線のリングが街の表情を和らげ、緑の重なりが、駅前から街、山並みへ連続していきます。

広場全体に大小のひとつづつ異なる形のリングをレイアウトしました。それぞれのリングが影響し合い、空間にリズムを作りながら、流れと溜まりの場所と広場の一体的なイメージを生み出しています。リングの中には芝や花の咲く植物、樹木をレイアウトしたり、既存樹を囲むようにデザインして、緑と居場所の関係を作っています。既存のベンチも残して使い、リングと一緒に使えるように木陰とのバランスを見ながら配置しました。

リングには、テーブルや背もたれを設えました。コーヒーを飲んだり、本を読んだり、ゆっくり時間を過ごすための街の家具です。かつて、JR鷹取工場があったことを伝える線路や鉄輪を模した既存の舗装パータンを継承し、リングの中に舗装を再現しました。地域の歴史を伝える継承のデザインです。

リングはゆるい傾斜による高低差を持ち、椅子からテーブルまでいろいろな用途に使えます。内部は子供の遊びに使えるよう、芝を開く場所を作っています。保育所の迎えの前後や、待ち合わせ、休憩、ランチ、読書、仕事、宿題など、目的によっていろいろな人が共存できます。

リングの動きと配置によって大きく開けた駅前に密度が生まれ、既存樹にリングの植栽が重なって風にゆれる、緑の濃淡のある風景になりました。通り過ぎるだけだった駅前が、気に入った場所を見つけて時間を過ごせる、マチのリビングのような広場になればと思います。

このプロジェクトは、駅前広場の交通計画見直しを含めた本整備の前段としてのプレリニューアルとして実施されました。ofaでは本整備に向けた構想から基本計画、住民アンケート、基本設計も担当しました。引き続き本整備の検討が進められる予定です。