真庭市足温泉リノベーションプロジェクト(改修整備)

温泉施設改修設計監理,岡山県真庭市,2021.03,改修面積266.80m2

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川)
設備設計監理:株式会社アイ設計
写真:ofa

岡山県真庭市の足温泉にある足温泉館の改修工事です。プロポーザルで選定頂いたプロジェクトです。
岡山の中山間地、旭川沿いにある足温泉は、つるつるした独特の泉質が特徴の温泉です。かつて、増える利用者に対応する目的で循環を取り入れて規模を拡大しましたが、泉質の特徴が薄まってしまっていました。今回のリニューアルは、その特別な泉質を大切にして「かけ流し」に戻すプロジェクトです。
設備機器はかけ流し化に伴って、全面的に更新しました。また、お湯と環境の本来の魅力を楽しんでいただけるように、湧出量に合わせて浴槽の容量を少し小さくし、湯に触れながら腰掛けられる段差をゆったり設けました。
温泉を出た後を過ごす時間も大切にしたいと考え、既存の畳スペースは壁を抜いて広々と風を通し、小さい浴室は休憩スペースに変更して光を取り込み、館内全体でゆっくり過ごせる場所にしました。
限られた自然の恵みを大切に使う、本当のお湯好きのための、コンパクトでも本当ののお湯を楽しむ温泉へのリニューアルです。

既存の浴室と廊下

既存浴槽にタイルで湯に触れられる居場所を追加して湯量を調整

照明や鏡など、効果の高い要素に絞って更新

湯量を抑えながら残した川沿いの露天風呂

小さな浴室を改修して作った木の休憩スペース

既存の窓を残して、廊下の壁も開放し、外の光を廊下まで導き入れます

 

真庭市湯原振興局・ふれあいセンター(移転整備改修)

市役所振興局+ふれあいセンター(改修移転整備)設計監理,岡山県真庭市,2020.03
既存改修部分(S造,2階建,1785.83m2)+増築(S造,平屋建,93.37m2)
事務所、図書館、ホール、交流スペース、住民活動支援(ワークショップ)

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川)
構造設計監理:有限会社桃李舎
設備設計監理:株式会社アイ設計
照明デザイン:株式会社加藤久樹デザイン事務所
ワークショップ協力:納屋工房
写真クレジット:鈴木研一

第31回BELCA賞表彰建築物(ベストリフォーム部門) 受賞 (公益社団法人ロングライフビル推進協会)

振興局事務所の移転先として隣接する町民ホール「ふれあいセンター」が選定されました。そのプロジェクトにおいて、昭和60年竣工の既存建物を、事務所の移転に合わせて性能も機能も、今とこれからの湯原地域にふさわしい空間へリノベーションすることを提案して、プロポーザルで選定いただき、設計監理+住民活動支援に取り組みました。

既存建物内部 廊下と小さな部屋の分割されていて使い勝手も下がっていた

800人規模の大きなホールをコンパクトに整理して、その分図書館と交流スペースをゆったり作っています。川沿いの気持ちの良い環境を活かして、部分的に外へ居場所を拡張するように庇を張り出しました。待合や会議室、交流スペースなどは共用としてフレキシブルに運用されます。既存の光庭の周りに多様なスペースが展開する、全体が一つの「ふれあいセンター」になりました。これまでの公共複合施設に多かった、「隣接しているけれど交わらない」状況を、プランと市による条例の再整理を同時に行い、それぞれの施設がゆるく空間を共有することで、豊かで効果的に新しい場所を作ることができました。必要に応じて断熱を補強し、サッシを追加するなど、環境性能も向上しています。

設計開始と同時に住民活動支援として住民参加、中学生とのワークショップを企画実施しました。3+1回のワークショップを経て、地域の声を聞き、地域の次の活動を後押しするプロジェクトとしても取り組みました。

エントランスから交流スペース、光庭、振興局カウンターと図書館がつながってみえる

振興局カウンターと一般利用可の会議室、それらで共用できる待合

ホール前は普段は振興局の待合として利用し、イベント時はホワイエとなる

1951年築の木造2階建て旧湯原振興局と新しいテラスの重なる風景

本と気持ちよく過ごすためにある魅力的な場所 真庭市立湯原図書館

キッズコーナーはカーペット敷きでリラックスして本と触れ合える

旭川と山の緑を望める閲覧デスク

キッチンを備えた交流スペース

交流スペースを外へ拡張するテラス

席数をコンパクトに整理し、地域産木材で仕上げたホール

展示会などの際は、解放して使えるホール出入口

建物から漏れた光が庇軒天に反射して明るさを広げる

日暮れ以降も中の活動が重なって見え、ふれあいセンターの魅力を発信する

3回にわたって地域の方と一緒に考え手を動かしたワークショップ

改修の現場は、解体が始まってからわかることを、丁寧にスピーディーに反映しながら設計検討を重ねる必要があります。クライアントである市と、施工者、設計者が一体となって、次々に現れる想定外に、コンセプトを維持しながら粘り強く対応して、新しいふれあいセンターとして生まれ変わりました。

六甲最高峰トイレ新築工事_供用開始

六甲最高峰トイレ新築工事 基本実施設計,意図伝達業務,兵庫県神戸市,2020.11
上屋:鉄骨造(屋根版CLT)トイレ部分:木造 平屋建,267.91m2)
写真撮影:ofa

プロポーザルで選定頂いてから3年を経て、建物部分が供用開始となりました。
都市に隣接する国立公園六甲最高峰にふさわしく、自然に調和しながらも場所の特性を大切に、その魅力を最大限に活かす休憩スペースとして設計に取り組みました。
「クサハラとタニヤネ」のデザインをベースに、雨水を集めて利用する工夫やクサハラによる六甲の草原植生の創出などのチャレンジが形となっています。
(外構部分は雪の季節を避けて、来春の施工予定です)
鉄骨の柱で大判のCLTをつないで折れながらつながる屋根を支えています。穏やかに起伏する屋根のラインは六甲の稜線とも呼応する姿です。大きな庇の下は、お弁当にも休憩にも、雨の日の身支度にもつかえるゆったりした空間です。

南西に向いた休憩スペースは冬にはひだまりになります。供用開始は11月1日でした。秋のシーズンに間に合い、たくさんのハイカーに使っていただいています。

敷地は24時間利用可能なエリアにあります。六甲から見る神戸の夜景に似合う、夜の景観もデザインしました。

 

真庭市消防湯原分署(移転改修+増築設計監理)

消防署+保健福祉センター(改修移転整備)設計監理,岡山県真庭市,2020.03
既存改修部分(RC造,平屋建,823.63m2)+増築(S造,平屋建,268.07m2)

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川、田村)
構造設計監理:有限会社桃李舎
設備設計監理:株式会社アイ設計
写真クレジット:鈴木研一

地域の安心で健やかな暮らしを支える、街の「安心安全のかなめ」としての消防署の移転計画です。既存の保健福祉センターを改修して機能をリフレッシュするとともに、一部を消防分署のスペースにあて、消防車庫部分は鉄骨造で増築しました。

以下の写真はofa撮影

築20年弱の保健福祉センターとして建てられた既存建物は立派なRC造

保健のための調理実習を想定して設計された既存調理室は学校の調理室のよう

消防と保健福祉センターの特殊な役割を重視して機能的なレイアウトとし、断熱改修をしっかりして働きやすい快適な業務環境をつくりました。
消防車庫は外からも消防車の存在がわかるように、保健福祉センターはカウンターがエントランスに向き合って訪れる方を迎えられるように、内部の調理室は料理教室から会議、パーティーまでいろいろな使い方ができるようフレキシブルに、地域の方に親しまれ使われる場所になるようデザインしました。
調理室はキッチンスペースにミーティングスペースを隣接し、廊下を挟んで隣の部屋からもお互いの活動が見える関係です。
楽しみながらグループで作業ができるように、大きなアイランドキッチンを設えました。
受付の場所はエントランス脇から正面に移動しま、開閉できる大きな建具を設えました。入口から見えやすく、来訪者を迎える配置とデザインです。保健福祉事務所は居ながら工事とし、執務スペースと受付は先行引き渡ししてスムーズに業務を継続していただくことができました。
消防車庫は大きな空間を鉄骨造で合理的にシンプルに構成しました。

ひととまちの魅力をつなぐ「かわのみち」_旭川サイクリングロード周辺施設設計

サイクリングロード休憩案内施設+住民活動支援(ワークショップ)+ロゴ+周知資料,岡山県真庭市,2019.03
グラフィック協力:SIRUSI

市内を流れる旭川に沿って勝山・久世・落合の三地域を結ぶ、サイクリングロードの周辺施設整備設計です。休憩スペースや家具、看板、路面サイン、東屋、ロゴ、マップなどをデザインしました。
ルート全長の中から、川を楽しめる気持ちのいい場所をいくつも選んで、場所ごとに大きさや高さの違う家具をレイアウトしました。地域の木をたくさん使っています。全長25㎞の短めルートなので、親子でゆっくり休み休みサイクリングして、それぞれの場所で「かわのリビング」のように過ごしてもらえたらと思います。


公園と川をつなぐ場所に大きなベンチとテーブル

ルート近くの見所やトイレを知らせるサインとベンチ

自転車をかけてもらえるのを待っているサイクルラック

このプロジェクトは、施設を設計するずっと手前、サイクリングロードの「意味」を市の方や地域の方と一緒に考えるところから、関わることができました。
サイクリングロードを、「ひととまちの魅力をつなぐ「かわのみち」」と位置付けて、川沿いに新しい魅力の場所を生むこと、「自転車」をひとにやさしいモビリティーと考え、歩く人・乗り物に乗る人・まちの交通の将来まで視野に入れて、町の新しい軸となるひとの流れを作ること、まちの方々と情報共有しながら、みちを育てるようにつくることを目指しました。



市の中で関係者に広くお声掛けしてキックオフミーティングを企画したり、まちの方々と意見交換ワークショップを行ったり。たくさんの方に関わって頂きながら進めることができました。
マップやロゴ、路面サインなどのグラフィックは、木テラスに続いてSIRUSIさん。シンプルで伝わるデザインです。


東屋は今後の計画案です。

河川や道路という土木的な存在が、まちとつながり、人の居場所になれるように、小さい要素を、共通するものと、場所ごとの考え、ひとつづつ丁寧に、関りを増やしながらデザインしていきました。
ルートは旭川・りんくるラインと名づけられました。

周辺施設整備という名前ですが、ロードバイクが走り抜けるサイクリングロードとはちがう、旭川ならではの「かわのみち」の環境のベースをつくったプロジェクトです。これからこの環境がどう育っていくか、楽しみにしています。