蒜山スポーツ公園自然広場 風のパレットHIRUZEN

利活用計画策定,基本実施設計,監理,植栽ワークショップ

岡山県真庭市,2023.09
公園リノベーション,対象面積 90000m2
パークセンター,鉄骨造(屋根CLTパネル),平屋建,改修146.58m2,増築60.16m2
東屋・公衆トイレ・BBQスペース,新築,鉄骨造(屋根CLTパネル),平屋建,延床計267.91 m2

事業主:真庭市
統括意匠設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川,田村)
構造設計:Graph Studio 荒木美香
設備設計:株式会社アイ設計 井上雅旦
ランドスケープ:環境デザイン事務所素地 松下岳生
施工:梶岡建設株式会社
写真:特記なし=小川重雄写真事務所 小川重雄
   ※=ofa M=真庭市

90,000m2の閉鎖されたミニゴルフ場を全面改修して市民のための公園に仕立て直すプロジェクトです。のびのびした草地とゆるい起伏を活かして、遊具やレストスペース・クロスカントリーコースを備え、高原の魅力を楽しめる公園になりました。ゆったり時間を過ごせるように、CLTを用いて木の葉のような屋根のレストスペースを設えました。

閉鎖されて数年たったゴルフ場は、池の防水や木の枝折れなど一部に傷みがあるものの、ひざ丈の草が風にゆれ、蒜山三座が見晴らせる気持ちの良い場所でした。この広大な緑地を市民のための広場にリノベーションするために、公園全体ではゴルフ場ならではの場所のまとまりや、遠くに延びる視距離など環境をできるだけ活かし、高原らしい魅力を大切に、効果的な介入を心がけて利活用計画から設計監理まで一貫してデザインしました。

地形は極力改変せず、そのままの緑地をゆったりめぐる園路を設けました。既存の傾斜に沿わせてできるだけ大きく公園全体を感じられるように、多少の勾配や凹凸はそのままに森を抜け、池をまわり、小川を渡る、リノベーションだからできる、おおらかで豊かな蒜山の環境を体験できます。

広大な公園の中で過ごす時間の、拠り所になるように3棟の東屋とバーベキュースペース、トイレを配置しました。小さな木の葉のような屋根が木々の合間に見え隠れし、風景の先へ誘います。建物は鉄骨の柱でCLTパネルの屋根を支える構成です。しっかりと鉄骨で支えることで、積雪の多い蒜山地域でも、風通し良く明るい東屋ができました。蒜山地域に多い赤い屋根が、緑の中に映えています。

既存のゴルフクラブハウスは、内部を改修するとともに、外に大きなテラスと庇を設け、パークセンターとしてリノベーションしました。光を受けるCLTの天井が内外をつなぐ、大きな木の下のレストスペースを作り出し、公園での滞在を支える拠点としました。

築40年を超えるクラブハウスは、しっかりした木の骨組みや厚みのある壁・天井の内部を活かし、痛みの目立つ外部は適切に補修して再生しました。特徴ある大きな木の庇がつくことで建物の輪郭線を変え、リニューアルを印象付けています。

既存のカウンターと新しいキッチンの幕板部分は、隣接地で生産された珪藻土をそのままの色で用いて左官仕上げとしました。もともとこの場所が、珪藻土の掘削跡地に整備されたものであり、その産業は蒜山高原が何万年も前に湖であったころの堆積物につながっています。今でも隣地では製造と掘削が行われています。その風景の中で地域の自然と産業の歴史を語る、温かみのある色合いと肌の仕上です。

パークセンター内は内側に建具を追加して室内環境をしっかり改善しました。家具はofaでデザインしたもの、地域の工房がデザイン・製作したもの、市が保管していたCLTボールプールなど、多様なデザインが混在しながら、地域のヒノキの色合いが全体をつないでいます。

夕方以降も公園の時間を楽しめるように、木のあたたかな色合いを見せるライティングで
くつろいだ雰囲気のパークセンター

バーベキュースペースの位置は、ゴルフ場のティーグラウンドでした。コースのグリーンだった場所に向かって、視線が延びていきます。大きく育った松の間の小高い場所に折れる屋根を重ねて場所を作り、洗い場とテーブルを設えました。

遠くの山並みまでまっすぐに見通す風景を、屋根の折れ方と重なりで切り取りながら
より方向性を強めています

屋根の高低差が居場所に抑揚をつくります

蒜山三座を望む北側のゾーンには、「さんざテラス」(レストスペース・トイレ)を設けました。大きな公園のいろいろな場所を選んで、長く過ごすための支えになります。大きな屋根とベンチ、だれでも弾ける「高原ピアノ」が備えられています。

CLTの屋根とベンチが大きな居場所をつくります

さんざテラスから北池、東屋、草の広場を経て蒜山三座の山並みへ
近景から遠景まで要素がつらなることで奥へと導きます

園路を歩くと時々に現れる木の屋根は、お互いに人の存在を感じさせながら
折り重なるように先へ誘います

風景に開く屋根と見守りのための日陰や座面を設えた東屋は、遊びの拠点となります

広大な公園の中で、遠くに見える屋根の配置によって遊び場をゆるく囲い
親しみやすいスケールにまとめます

地形をそのまま活かしたスロープなど、ランドスケープと調和する遊びの設えです

土地の起伏と木、コンクリートの組み合わせと配置だけで、動きのある遊びを誘います

高原にある閉鎖されたミニゴルフ場を市民のための公園にリノベーションするプロジェクトは、既存の要素を丁寧に読み解き、その魅力をみつけて、徹底して活かすことで、気持ちよく、誰もがのびのびと遊び過ごせる場所として実現しました。

(※)

川東公園休憩スペース

 
基本実施設計,岡山県真庭市,2023.03
公園整備基本構想(街区公園):対象面積約6,000m2
東屋:新築,木(CLT+在来)造,平屋建,延面積16.8m2
統括意匠設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川)
構造設計:株式会社MID研究所
監理:真庭市
施工:株式会社タブチ
写真:ofa

ウッドデザイン賞優秀賞林野庁長官賞_ハートフルデザイン部門受賞  (一般社団法人日本ウッドデザイン協会)(旭川・りんくるラインを含む一連の環境として)

真庭市落合地域において、地域住民の憩いの場として利用されている公園の全体景観整備構想と休憩スペースを設計しました。旭川の左岸側にあるこの公園は、古くから桜の名所としてお花見や出初式で賑わい、最近は彼岸花の群生でも知られ、秋には多くの人が写真撮影などを楽しみに訪れます。全体構想では、近年整備された川沿いのサイクリングロード、旭川・りんくるラインに接する大きな公園であることから、サイクリングロードの南の拠点としても位置づけました。


旭川に面して建つ東屋は、たくさんの人が川の眺めを楽しめるように、流れに沿って長く伸びるプランとしました。一枚の大版CLT(直行集成板)を、ルーバーのように配置したヒノキの柱で空へ差上げる、シンプルな構成です。


屋根は対角に勾配をとりました。空間に高低の変化を生みながら旭川に向かって開き、川沿いのびのびとした眺めを楽しめます。


足元には大きな複数のベンチを配して、居場所を屋根下から川に向かって広げました。旭川・りんくるライン沿いには、4年前にofaで設計した家具(ベンチやテーブル、サイン)が点在しており、この公園にも設えられています。(ひととまちの魅力をつなぐ「かわのみち」) 今回のベンチもこれらと共通のまるい曲線のデザインとして、川東公園の印象をサイクリングロード全体につなぎ、一連のプロジェクトとしての一体感をつくっています。


CLTはスギヒノキのハイブリッド、柱、ベンチはヒノキです。真庭市はヒノキの産地であり、ここでも地域産のヒノキを使用しています。地域産ヒノキのそのままの色合いを活かせるよう、ベンチも東屋もクリア塗装としました。サイズや高さ、視線の向きが異なるベンチが複数あることで、いくつかのグループが気兼ねなく一緒に過ごすことができます。


ルーバー状の柱はどの方向からも見通しを遮らず、川や桜の景色を透かして溶け込み、死角を作らない安全性も備えます。


公園の大部分はひろびろとした多目的広場となっており、地域利用のグランドゴルフなどが活発に行われています。小さな東屋ですが、普段の地域利用と、桜や彼岸花の観光利用の方が共存できる、居場所の多さと多面性をもつ空間です。


ベンチは荷物を置いてゆったり座れる大きさと奥行き、高さのバリエーションがあり居場所を選べる、だれにも使いやすい休憩スペースです。


この場所の役割を、身近な公園として、またサイクリングロードに沿った近隣地区をつなぐ場所、観光の来訪者を迎える場所という多様なスケールで位置づける中で、休憩スペースの整備は、近くからも遠くからも、行きたい・過ごしたい・使いたい、目的地になる公園リニューアルをめざした第一歩です。


公園内で4年前にデザインしたベンチやテーブル、サインは、木の色も落ち着いて穏やかに風景になじんでいます。その際にサイクリングロードのビジョンとした「ひととまちの魅力をつなぐ〈かわのみち〉」が、少しずつ育ち続けています。

JR鷹取駅北側駅前広場リニューアル_すごす、たのしむ、マチのリビング

関西造園土木・ofa設計施工共同体,兵庫県神戸市,2022.03
対象面積約2,000m2,駅前広場
施工:関西造園土木株式会社
設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川)
ランドスケープ:環境デザイン素地
写真:ofa

阪神淡路大震災で大きな被害を受けたJR鷹取工場跡を、市街地として形成(平成8年震災復興土地区画整理事業決定)する中で整備された、駅前広場のリニューアルです。広場完成(平成17年)から15年がたち、街はほぼ一通りの開発がなされ、住宅や小学校・店舗の混在するエリアとして人口が増える反面、駅前広場は通り過ぎる場所になっていました。この駅前広場プロポーザルに、広場を「すごす、たのしむ、マチのリビング」としてリニューアルすることを提案して選定され、実現しました。

環境を丁寧に読み解き、できるだけ今あるものを使いながら、ベンチにもテーブルにもなる傾斜のあるリングと潤いある緑を合わせて、気持ちの良い居場所をつくりました。誰もが思い思いにゆったりと過ごす場所を見つけられる、快適なマチのリビングのような広場です。ゆったりした曲線のリングが街の表情を和らげ、緑の重なりが、駅前から街、山並みへ連続していきます。

広場全体に大小のひとつづつ異なる形のリングをレイアウトしました。それぞれのリングが影響し合い、空間にリズムを作りながら、流れと溜まりの場所と広場の一体的なイメージを生み出しています。リングの中には芝や花の咲く植物、樹木をレイアウトしたり、既存樹を囲むようにデザインして、緑と居場所の関係を作っています。既存のベンチも残して使い、リングと一緒に使えるように木陰とのバランスを見ながら配置しました。

リングには、テーブルや背もたれを設えました。コーヒーを飲んだり、本を読んだり、ゆっくり時間を過ごすための街の家具です。かつて、JR鷹取工場があったことを伝える線路や鉄輪を模した既存の舗装パータンを継承し、リングの中に舗装を再現しました。地域の歴史を伝える継承のデザインです。

リングはゆるい傾斜による高低差を持ち、椅子からテーブルまでいろいろな用途に使えます。内部は子供の遊びに使えるよう、芝を開く場所を作っています。保育所の迎えの前後や、待ち合わせ、休憩、ランチ、読書、仕事、宿題など、目的によっていろいろな人が共存できます。

リングの動きと配置によって大きく開けた駅前に密度が生まれ、既存樹にリングの植栽が重なって風にゆれる、緑の濃淡のある風景になりました。通り過ぎるだけだった駅前が、気に入った場所を見つけて時間を過ごせる、マチのリビングのような広場になればと思います。

このプロジェクトは、駅前広場の交通計画見直しを含めた本整備の前段としてのプレリニューアルとして実施されました。ofaでは本整備に向けた構想から基本計画、住民アンケート、基本設計も担当しました。引き続き本整備の検討が進められる予定です。

江真コンサルティング新社屋

基本実施設計監理,愛知県知多市,2022.03
新築,木造(CLT+在来),2階建,延床 140.41m2 , 事務所+倉庫

統括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川,田村)
構造設計監理:株式会社構造計画プラス・ワン
設備設計監理:株式会社アイ設計
施工:吉富工務店株式会社
写真クレジット:鈴木研一(特記以外全て)

現場レポはこちら

木材利用優良施設コンクール2022 優秀賞 入選 (木材利用推進中央協議会)
ウッドデザイン賞2022 受賞 (一般社団法人日本ウッドデザイン協会)ウッドデザイン賞受賞作品データベース

CLT パネル工法+ 在来工法によるコンパクトな木造オフィスの新築プロジェクトです。日独でコンサルティングや輸入、森林や木材に関わる業務も行うクライアントは、新オフィスの計画に際してCLTや木釘の採用、認証など様々なチャレンジを希望されていました。それらのご希望を最大限に反映し、事務所+倉庫の機能を合理的に満たしながら、木の穏やかさと力強さを感じられる、快適なオフィスを計画しました。

木造の構成

本プロジェクトでは、代表的な森林認証制度の一つであるFSC®プロジェクト部分認証を取得しました。CLT には静岡県の天竜産杉を使用しています。
建物は事務所部分をCLT パネル工法2 階建て、倉庫部分を在来軸組工法としました。滞在時間や作業内容等、空間特性の違いを適切に反映してコストコントロールしつつ、必要な大きさや機能を合理的に満たす木造建築です。
オフィスでは吹抜けや階段、屋根勾配など空間の高低差と連続性を生かして、光と風が通る上下階の一体感のある快適な空間としています。大きなCLT を内部は表しで用い、効果的に見せました。外からもCLT の小口がみえるように角度をつけた窓の額縁デザインは、工場加工精度の良いCLT ならではの工夫です。

認証にかかる森から建物に至るまでのトレースなどを通して、そこに立ち上がる建築の遠い背景にも意識を致すような、これからの環境と社会への責任をはたす明確な意思を体現するプロジェクトになりました。

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交通量の多い通りに面した敷地で、倉庫への搬入車両の乗り入れを想定し、2階建の事務所の奥に平屋の倉庫を配置しています。

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外壁は構造の木部材をしっかり保護する金属板葺です。横継を出さないシャープな仕上がりです。

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大きなCLTの架構の中に、在来工法の2階床を挿入するような作り方です。内部は構造を担うCLTを表しとして木の力強さと穏やかさを感じられる空間としました。在来軸組部分とは同じ木の仕上げでも、木目の強さや色合いなどの差を際立たせ、木のあり方の違いを対比的につくりました。

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奥に長い平面のなかに光や風を取り入れ、空間を緩やかに分節する中庭を設けています。

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階段や棚もCLTで構成しています。2階まで一枚で立つ大きなCLTの壁から片持ちで持出す、シンプルでCLTらしい作り方です。

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階段の踊り場はラミナ(挽き板)の積層の様子を見せるように、CLTを積み上げてつくりました。段下は引き出しとして利用しています。

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エントランスは、倉庫への搬入品を受け入れを兼ねて大きな間口を確保し、物品をストレートに出し入れのできる機能的な動線計画です。

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倉庫は在来の軸組にCLTの壁を合わせて作っています。縦木目が見える部分がCLTです。合板仕上部分にはクライアントの扱う木釘を採用しました。釘の頭が光らない穏やかな木の仕上げができ、将来の解体時の分別も低減できます。

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階段部分は吹き抜けとして、光や風をとおし、上下階のオフィスの雰囲気が伝わる一体感をつくります。左手の壁は、1階~2階の天井まで一枚のCLTを幅方向に並べて構成されています。

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屋根もCLTを表しで用い、対角に勾配をとって斜めに天井高を変化させています。大きな木の板が奥行きの長い空間に場所ごとの雰囲気の違いを生んでいます。CLTの積層面が外から見えるように、窓の額縁を外に向かって開く角度をつけて工場で加工しました。中からはCLTの厚みが見えず、木のシャープなエッジが風景を切り取っています。

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休憩スペースのキッチンは大きめにつくり、窓からの光が明るい、スタッフのコミュニケーションの場所として設えました。

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構造材であるCLTの天井面には照明や設備器具を直接つけず、木の面をすっきり維持しています。CLTの縦横の使い方は、構造への合理性を優先し、構造材としての在り方をそのまま見せています。

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階段内部に明かりが灯ると、CLTの積層小口や木目の様子が外からもよりよく見えるようになります。

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いくつもの窓から道へ木の色と光がこぼれ、木の建物であることを伝えるとともに、大きな通り沿いの街に温かみを添えています。


施工中には構造見学会や竣工見学会を実施し、プロジェクトでの取り組みをご紹介するとともに、CLTを構造とした設計事例として沢山の方にご意見を伺い、議論する機会をいただきました。

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構造ダイアグラム

撮影:ofa

 

 

特別養護老人ホームさくらガーデン

基本実施設計監理,兵庫県神戸市,2021.08
新築,鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造,2階建,延床 3819.61㎡
特別養護老人ホーム70室,ショートステイ10室,デイサービス
CASBEE評価Aランク取得

統括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川,山下)
構造設計監理:株式会社構造計画プラス・ワン
設備設計監理:株式会社アイ設計(井上,高橋,西原)
施工:株式会社新井組
照明デザイン:株式会社 加藤久樹デザイン事務所
グラフィックデザイン:SASA ATORIE
設計協力:はな建築事務所
写真クレジット:鈴木研一 (※)のみofa

ユニットケアへの移行に合わせ、既存施設の建替えとして計画された特別養護老人ホームです。建物はユニットケアのあり方を体現し、各ユニット及びデイサービス等のパブリックスペースと、事務所などのバックスペースがそれぞれの屋根を持ち、それらを寄せ集めた小さな集落のような配置としました。

敷地は神戸市の北端の尾根にあたります。たくさんの既存の桜の向こうに六甲の山並みを望む素晴らしい環境です。東、南側の緑豊かで見晴らしの良い方向に沿って眺望をとり、日々の暮らしに四季の変化を添えています。

全体で80室の個室を、10室1ユニットとして、1,2階に4ユニットずつ配置した構成です。ユニットの共同生活室や廊下には、入居者の方が「家」と感じていただけるように、見通しをとりながらも小さな凹凸や角度を持って、多様な場所を作っています。それぞれに居場所が見つけられるよう、セミプライベートスペース、セミパブリックスペースを離散的に配置しました。場所ごとの窓を通して見える景色が広がりと彩りをもたらしています。

住む方の健やかな毎日を支える空間と福祉の地域づくりへの貢献、職員の働きやすさが両立する、これからの福祉の場所です。

屋根を分割して低めに抑えた勾配屋根が重なる風景。建物は外断熱としました。空調負荷を下げるとともに、内部の温度変化を抑え、穏やかな環境を作っています。

大きめに張り出したエントランス庇で、車での利用者を迎えます。雨の日も安心なエントランスです。

中庭まで視線の抜けるエントランス受付カウンター。落ち着いた色合いと素材感。視線の先に中庭の明るさがあることが、安心感につながります。

地域交流スペースは中庭まで一体的に利用できるパブリックスペースです。地域の方との交流やイベントの企画など、外へ出かけにくい暮らしの中で、ハレの場として設えました。

吹き抜けでつながる1,2階。地域交流スペースのハレの雰囲気を高めるとともに、2階からもイベントに参加することができます。

中庭は普段の暮らしの貴重な外部空間として、風に揺れる葉や香りのある花が咲くなど、四季の変化を感じられる木を選んで植栽しました。

ユニット入口はくらしの玄関としてここで靴を履き替えます。玄関らしく、ユニット名の表札と玄関灯を設えました。

玄関内は各ユニットでタイルの種類を変えて、それぞれに個性的で家の顔になる雰囲気を作っています。

共同生活室は、できるだけ食事をこの場所で準備できるよう、大きめのアイランド型のキッチンを設えました。壁面は一部を玄関と同じタイル仕上げとし、楽しみのある「セミパブリック」をイメージしたスペースとしました。

共同生活室からは、六甲の山並みや桜の谷など、方角によってのびのびと気持ちの良い眺望が開けます。車いすでの寄り付きに合わせて、窓台の高さを少し低めに設えています。外断熱の入った壁の厚みによって、窓台は少し腰掛けたりもできる奥行きです。

ダイニングの向かいには談話スペースを設けました。一回り小さいセミパブリックです。空間サイズのバリエーションと、プライベートーパブリックのレベル設定の掛け合わせで、多様な居場所をつくることを心掛けました。

外部は非常時にも活用できるテラスが連続し、共同生活室の前は大きく張り出しました。内部床とフラットにつながり、車いすでも出やすいテラスは、日常生活の中で身近な外の居場所になります。

東側の1階は、松の緑の濃い陰影と桜の取り合わせが楽しめるテラスです。

個室には手洗と鏡のほかに収納や読書灯も設えました。大きめの面積と大きな開口でゆったりした印象です。ベッドサイドには濃い色合いの木を設えました。壁の痛みを抑え、室内に落ち着きが生まれています。

廊下はスタッフからの見通しを確保しながら、細かい凹凸によってプライベートの雰囲気をつくり、いくつかのベンチ作って、ちょっと腰を掛けられるセミプライベートのスペースを設けました。

デイサービスは勾配のある高い天井にハイサイドライトをとり、自然光を取り入れた明るい空間とし、天井の勾配で場所の変化を作りました。お昼には奥の小窓がカウンターとなってランチが提供されます。

入浴の時間がくつろげる楽しいものであるように願って、浴室はすべて光庭に面し、外の光と空気に触れられる窓を設けました。

廊下は地窓や高窓を工夫して、できるだけ自然光で明るくしています。緑や空が見えるなど、奥へ歩く際の不安感を減らすつくりとしました。

2階から見下ろす地域交流スペース。地域の方と一緒にコンサートやクリスマス会などイベントが計画されています。普段はラウンジのように設えて、訪問される方やご見学の方の対応などにも使われています。

中庭の夕景は、あたたかな光が地域交流スペースからあふれてきます。中庭側のお部屋からも空や光の変化が見えています。

エントランス周りには各部屋や共同生活室の光がこぼれています。地域の中の安心の光でもあります。

穏やかな光と多様な居場所のある大きな家は、住む方の健やかな毎日を支える空間と福祉の地域づくりへの貢献、職員の働きやすさが両立する、これからの福祉の場所です。

設計と並行してロゴもデザインしました。マークは建物の構成を表しています。暮らす人、働く人を考えて少しずつ傾けたプランをそのままシンボルとして、印象的なイメージができました。

(※)

 

 

 

お風呂に入る時間が楽しみになるように、浴室には「さくら、わかくさ、つき、そらの湯」と名前が付きました。名前に合わせてのれんをデザインし、宇奈月温泉総湯のご縁で金沢の染元平木さんに作っていただけました。今回もデザインでお願いしたイメージが鮮やかに出ています。(※)

 

六甲最高峰トイレ

基本実施設計,意図伝達業務,兵庫県神戸市,2020.10
新築,鉄骨造(屋根CLTパネル),一部木造,平屋建,延床267.91 m2
公衆トイレ,休憩スペース,園地

総括意匠設計・意図伝達:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川、田村)
構造設計・意図伝達:有限会社桃李舎
設備設計:長谷川設備計画
ランドスケープデザイン・意図伝達:株式会社エスエフジー・ランドスケープアーキテクツ
照明デザイン:株式会社加藤久樹デザイン事務所
建築施工:有限会社ビームスコンストラクション
機械設備施工:アイオイ設備工業株式会社
電気設備施工:株式会社摩耶電気工業所
撮影:小川重雄(【※】のみofa)

JIA優秀建築選100 2021-2022(日本建築家協会) 
第25回木材活用コンクール 木材活用賞(日本木材青壮年団体連合会) 
iFデザイン賞2022(iF International Forum Design GmbH) 
第23回人間サイズのまちづくり賞 奨励賞(兵庫県)
地域材利活用建築デザインコンテストin兵庫 入賞(ひょうご木のすまい協議会)
ウッドデザイン賞2021 ソーシャルデザイン賞 受賞(ウッドデザイン賞運営事務局)ウッドデザイン賞受賞作品データベース 
日本空間デザイン賞2021 ショートリスト 選定
([一社]日本商環境デザイン協会 [一社]日本空間デザイン協会)
ティンバライズ T-1 ホームコネクター賞2020 受賞 (NPO法人 team Timberize)
JTAトイレ賞2023 奨励賞(一般社団法人日本トイレ協会 )
第22回環境・設備デザイン賞 都市・ランドスケープデザイン部門 優秀賞(建築設備綜合協会)

神戸の都市の魅力の一つである六甲山の価値向上、環境整備の一環として、六甲山頂エリアに新設された公衆トイレ・休憩スペースと園地の計画です。2017年にプロポーザルで選定いただき、基本実施設計と意図伝達業務を担当しました。
敷地は六甲山の国立公園特別地域内にあたります。周辺の山並みに呼応するように折れつながる屋根が、大きな家具のようなベンチの上に軽々と浮かぶ、のびやかな空間をつくりました。木の大きなベンチの後ろにトイレ機能を持つようにつくった小屋部分は屋根と縁を切り、男女多目的を分けて配置したことで風と光のとおる気持ちの良い空間となりました。六甲の自然環境に調和するよう木や仕上材の色合いをコントロールしています。建物全体の高さを抑え、伏せるように自然の中に配置したことで、周辺の環境になじむ全体像としました。

CLTの薄く軽い屋根は、繊細な鉄骨柱によって空中に浮かび、シャープで繊細な軒先のラインを作っています。折れつながる事で、天井高さが場所によって変わって、空間に抑揚を作り出します。

足元には山際の自然を感じながらゆったりくつろげる大きなベンチを設え、その後ろにトイレがある構成です。屋根の両端下には同様の単独ベンチも設けました。下見板張りが連続するようにディテールをデザインし、大きな家具が集まって空間を作っているようにつくりました。ベンチは大きな台形とすることで、座面の奥行きや背の角度が多様に生まれ、そこでの休憩の居方のスタイルもまた多様に発生する仕掛けとなっています。屋根のタニの集まる部分からは雨水を集めています。折れつながる屋根は集水のための形でもあります。上下水道のない敷地で、気持ちよく安心して使えるトイレをつくりたいと、手洗い水は雨水を利用し、洗浄水は土壌微生物による浄化システムを採用して循環利用しています。

CLTの屋根版の水平接合部はGIR(グルードインロッド)を採用することによりつなぎ目を見せないおさまりになっています。CLTの最大幅にかかわらず大きな一枚の板として、おおらかですっきりとした屋根下空間を実現できました。大きな屋根の下に、ボリュームを分割して配置することで、谷側へも見通しが取れ、風通しの良いスペースです。屋根版 CLT は兵庫県産材指定のヒノキスギ、トイレ部分の外装材およびベンチは国産スギとし、一部は神戸市が森林維持の一環として伐採・保管する六甲山の間伐材を利用しました。

トイレの出入り口には引込型のドアを設え、夏季は開放し、冬季は凍結の対策として閉められるように作っています。

屋根とトイレ部分の外壁は縁を切り、その間を高窓とすることで自然の光を内部に取り入れています。
山頂付近は冬季は積雪もあり、気温も下がります。トイレブースは外壁に面さない室内の中央部分に配置して、冬季の気温低下の影響を避けています。間接照明を施して、天井の木の肌がきれいに見える工夫をしています。

【※】

南側の山頂を望むレストスペース。ベンチに深く寝そべって見上げると、軒先で切り取られる森のラインが、山頂側の新しい景観をつくっています。土間の曲線のおおらかで引き締まったラインが園地全体に気持ちの良い美しさを生んでいます。

段差やベンチ、屋根下のありかたが、多様な居方につながっています。敷地は六甲山脈の東端にあたり、最高峰から降りたところです。もとは砂利敷きで、時々駐車場に使われるだけの場所でした。

森の端部は、芝の園地からクサハラを経て植生をつなぎ、グラデーションのように作っています。クサハラ部分は種採集、育苗とステップを踏み、竣工後に現地へ苗を戻しています。

浅く折れつながる屋根を、周辺の緑の中に伏せるように配置しています。洗浄水や雨水の循環槽などはすべて土中として、大勢が休憩できる園地として広く確保しました。

24時間利用可能なトイレであり、市街地から近く車でのアクセスも可能なため、夜間の利用もあります。できるだけ気持ちの良い場所であるように、安心感と美しさを両立する照明デザインを丁寧に行いました。
内部から高窓を通してあふれ出る光と、外部からの光で屋根版のCLTの木の暖かみのある色をよりきれいに見せてくれています。クサハラプロジェクトは、プロポーザル当初からの提案で、六甲山系の草本類によって芝の園地から森への連続性を作りました。市民や利用者が環境の維持にかかわることで、山の環境を消費するだけでなく育てる動きにつなげたいところです。詳しくはこちら(タネトリワークショップ苗植付)でレポートしています。今はまだ小さな苗ですが、都市に近い山の環境維持のあり方を考えるきっかけになればと思います。

津山信用金庫勝山支店

基本実施設計監理,岡山県真庭市,2021.04
新築,木(CLT+在来)造,平屋建,延床108.27m2
事務所(銀行の支店)

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川,田村)
構造設計監理:有限会社桃李舎
設備設計監理:株式会社アイ設計
設計施工:三和建設株式会社
写真クレジット:鈴木研一

ウッドデザイン賞2021 ハートフルデザイン部門 奨励賞(審査員長賞) 受賞 (ウッドデザイン賞運営事務局)ウッドデザイン賞受賞作品データベース
木材利用優良施設コンクール2021 優秀賞 入選 (木材利用推進中央協議会)

津山市に本店を置く信用金庫の支店です。ofaは、三和建設株式会社の設計施工チームに参加しました。木材産業の盛んな真庭市勝山地域において、地域産業の魅力を伝え、後押しするとともに、地域での木材活用のきっかけとなるよう、木材を活用した店舗を建設するプロジェクトです。CLTと在来木造を合わせた適材適所の木造で、信用金庫のこれからの姿をあらわす建築をめざしました。

建物はL型の平面を、一部折板としたCLTの壁と屋根で構成し、部分的に在来木造を取り入れて、適材適所の木造建築としました。ロビーは地域交流に活用したいとのお考えもあり、大きなCLTの壁で執務スペースの「守る」とロビーの「創る」を分けながらつないでいます。自由なプランをCLT の折板を用いて、木の表情を活かして、軽やかにつくっています。Tをプリーツのように折って、強度を上げるとともに、アイコンになる印象的な形としました。大きなCLTを内部は表しで用い、効果的に見せるデザインです。


これからの信用組合のあり方として、コンサルティングに力を入れていきたいとのお考えから、ロビーは広く、通りに面して開く形としました。執務室とロビーをつなぐカウンターまわりは、仕切りをなくしてゆったりと作ろうと、奥行きが深くなる部分は屋根をプリーツのように折って強度を上げ、先端を在来木造で支えました。プリーツが方向性を持つことで、南北に視線の抜けるのびのびした空間になりました。
屋根を折ったことで屋根版CLTはt120と薄くなり、軽快な印象を作っています。
奥へ広がるロビーは執務空間と大きなCLTの壁で仕切られています。安定感のある厚みのある木の壁です。金物は隠さずに見せるようにディテールを丁寧に調整しています。建った後も、建物の作り方がわかる構成です。
カウンター内側からは北側の山並みが、来客側からはプリーツの三角形から電車や緑の景色が見える、開放感のある接客スペースです。
接客カウンターもCLTの積層面が見えるように作りました。壁の小口はできるだけ見えるように構成し、CLTの厚みや木の重なり具合が見えるように気を配っています。 北側はCLTの屋根版を在来木造の軸組みが支えていることがよくわかります。ガラスを通して内外がつながる雰囲気は、まちに開くこれからの信金のポリシーを表しています。
暮れ始めると、北側の山並みがガラスに映り、その向こうに大きな木の壁が見えます。
夜には木の温かい色合いに満ちたロビースペースが見え、通りに信金の存在と、その場所がめざす温かさを伝えてくれます。すぐ南側を鉄道がとおる敷地。上空からの写真ではプリーツ部分の長さがよくわかります。この距離を1枚もののCLTで飛ばしています。それが両端だけで支えられているのは、大判のCLTとそれを折る建築の工夫のたまものです。
施工中には構造見学会も行いました。島根大学の学生さんや企画設計施工など建築の専門家など多くの方に見学していただけました。すぐそばを鉄道がとおる難しい敷地でのCLTの建て方も、丁寧な制作打合せと現場の手配でスムーズに進みました。

真庭市足温泉リノベーションプロジェクト

温泉施設改修設計監理,岡山県真庭市,2021.03,改修面積266.80m2

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川)
設備設計監理:株式会社アイ設計
写真:ofa

岡山県真庭市の足温泉にある足温泉館の改修工事です。プロポーザルで選定頂いたプロジェクトです。
岡山の中山間地、旭川沿いにある足温泉は、つるつるした独特の泉質が特徴の温泉です。かつて、増える利用者に対応する目的で循環を取り入れて規模を拡大しましたが、泉質の特徴が薄まってしまっていました。今回のリニューアルは、その特別な泉質を大切にして「かけ流し」に戻すプロジェクトです。
設備機器はかけ流し化に伴って、全面的に更新しました。また、お湯と環境の本来の魅力を楽しんでいただけるように、湧出量に合わせて浴槽の容量を少し小さくし、湯に触れながら腰掛けられる段差をゆったり設けました。
温泉を出た後を過ごす時間も大切にしたいと考え、既存の畳スペースは壁を抜いて広々と風を通し、小さい浴室は休憩スペースに変更して光を取り込み、館内全体でゆっくり過ごせる場所にしました。
限られた自然の恵みを大切に使う、本当のお湯好きのための、コンパクトでも本当ののお湯を楽しむ温泉へのリニューアルです。

既存の浴室と廊下

既存浴槽にタイルで湯に触れられる居場所を追加して湯量を調整

照明や鏡など、効果の高い要素に絞って更新

湯量を抑えながら残した川沿いの露天風呂

小さな浴室を改修して作った木の休憩スペース

既存の窓を残して、廊下の壁も開放し、外の光を廊下まで導き入れます

真庭市湯原振興局・ふれあいセンター

市役所振興局+ふれあいセンター(改修移転整備)設計監理,岡山県真庭市,2020.03
既存改修部分(S造,2階建,1785.83m2)+増築(S造,平屋建,93.37m2)
事務所、図書館、ホール、交流スペース、住民活動支援(ワークショップ)

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川)
構造設計監理:有限会社桃李舎
設備設計監理:株式会社アイ設計
照明デザイン:株式会社加藤久樹デザイン事務所
ワークショップ協力:納屋工房
写真クレジット:鈴木研一

第31回BELCA賞表彰建築物(ベストリフォーム部門) 受賞 (公益社団法人ロングライフビル推進協会)

振興局事務所の移転先として隣接する町民ホール「ふれあいセンター」が選定されました。そのプロジェクトにおいて、昭和60年竣工の既存建物を、事務所の移転に合わせて性能も機能も、今とこれからの湯原地域にふさわしい空間へリノベーションすることを提案して、プロポーザルで選定いただき、設計監理+住民活動支援に取り組みました。

既存建物内部 廊下と小さな部屋の分割されていて使い勝手も下がっていた

800人規模の大きなホールをコンパクトに整理して、その分図書館と交流スペースをゆったり作っています。川沿いの気持ちの良い環境を活かして、部分的に外へ居場所を拡張するように庇を張り出しました。待合や会議室、交流スペースなどは共用としてフレキシブルに運用されます。既存の光庭の周りに多様なスペースが展開する、全体が一つの「ふれあいセンター」になりました。これまでの公共複合施設に多かった、「隣接しているけれど交わらない」状況を、プランと市による条例の再整理を同時に行い、それぞれの施設がゆるく空間を共有することで、豊かで効果的に新しい場所を作ることができました。必要に応じて断熱を補強し、サッシを追加するなど、環境性能も向上しています。

設計開始と同時に住民活動支援として住民参加、中学生とのワークショップを企画実施しました。3+1回のワークショップを経て、地域の声を聞き、地域の次の活動を後押しするプロジェクトとしても取り組みました。

エントランスから交流スペース、光庭、振興局カウンターと図書館がつながってみえる

振興局カウンターと一般利用可の会議室、それらで共用できる待合

ホール前は普段は振興局の待合として利用し、イベント時はホワイエとなる

1951年築の木造2階建て旧湯原振興局と新しいテラスの重なる風景

本と気持ちよく過ごすためにある魅力的な場所 真庭市立湯原図書館

キッズコーナーはカーペット敷きでリラックスして本と触れ合える

旭川と山の緑を望める閲覧デスク

キッチンを備えた交流スペース

交流スペースを外へ拡張するテラス

席数をコンパクトに整理し、地域産木材で仕上げたホール

展示会などの際は、解放して使えるホール出入口

建物から漏れた光が庇軒天に反射して明るさを広げる

日暮れ以降も中の活動が重なって見え、ふれあいセンターの魅力を発信する

3回にわたって地域の方と一緒に考え手を動かしたワークショップ

改修の現場は、解体が始まってからわかることを、丁寧にスピーディーに反映しながら設計検討を重ねる必要があります。クライアントである市と、施工者、設計者が一体となって、次々に現れる想定外に、コンセプトを維持しながら粘り強く対応して、新しいふれあいセンターとして生まれ変わりました。

真庭市消防湯原分署

消防署+保健福祉センター(改修移転整備)設計監理,岡山県真庭市,2020.03
既存改修部分(RC造,平屋建,823.63m2)+増築(S造,平屋建,268.07m2)

総括意匠設計監理:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原、深川、田村)
構造設計監理:有限会社桃李舎
設備設計監理:株式会社アイ設計
写真クレジット:鈴木研一

地域の安心で健やかな暮らしを支える、街の「安心安全のかなめ」としての消防署の移転計画です。既存の保健福祉センターを改修して機能をリフレッシュするとともに、一部を消防分署のスペースにあて、消防車庫部分は鉄骨造で増築しました。

以下の写真はofa撮影

築20年弱の保健福祉センターとして建てられた既存建物は立派なRC造

保健のための調理実習を想定して設計された既存調理室は学校の調理室のよう

消防と保健福祉センターの特殊な役割を重視して機能的なレイアウトとし、断熱改修をしっかりして働きやすい快適な業務環境をつくりました。
消防車庫は外からも消防車の存在がわかるように、保健福祉センターはカウンターがエントランスに向き合って訪れる方を迎えられるように、内部の調理室は料理教室から会議、パーティーまでいろいろな使い方ができるようフレキシブルに、地域の方に親しまれ使われる場所になるようデザインしました。
調理室はキッチンスペースにミーティングスペースを隣接し、廊下を挟んで隣の部屋からもお互いの活動が見える関係です。
楽しみながらグループで作業ができるように、大きなアイランドキッチンを設えました。
受付の場所はエントランス脇から正面に移動しま、開閉できる大きな建具を設えました。入口から見えやすく、来訪者を迎える配置とデザインです。保健福祉事務所は居ながら工事とし、執務スペースと受付は先行引き渡ししてスムーズに業務を継続していただくことができました。
消防車庫は大きな空間を鉄骨造で合理的にシンプルに構成しました。