利活用計画策定,基本実施設計,監理,植栽ワークショップ
岡山県真庭市,2023.09
公園リノベーション,対象面積 90000m2
パークセンター,鉄骨造(屋根CLTパネル),平屋建,改修146.58m2,増築60.16m2
東屋・公衆トイレ・BBQスペース,新築,鉄骨造(屋根CLTパネル),平屋建,延床計267.91 m2
事業主:真庭市
統括意匠設計:ofa/小原賢一+深川礼子(担当:小原,深川,田村)
構造設計:Graph Studio 荒木美香
設備設計:株式会社アイ設計 井上雅旦
ランドスケープ:環境デザイン事務所素地 松下岳生
施工:梶岡建設株式会社
写真:特記なし=小川重雄写真事務所 小川重雄
   ※=ofa M=真庭市
90,000m2の閉鎖されたミニゴルフ場を全面改修して市民のための公園に仕立て直すプロジェクトです。のびのびした草地とゆるい起伏を活かして、遊具やレストスペース・クロスカントリーコースを備え、高原の魅力を楽しめる公園になりました。ゆったり時間を過ごせるように、CLTを用いて木の葉のような屋根のレストスペースを設えました。

閉鎖されて数年たったゴルフ場は、池の防水や木の枝折れなど一部に傷みがあるものの、ひざ丈の草が風にゆれ、蒜山三座が見晴らせる気持ちの良い場所でした。この広大な緑地を市民のための広場にリノベーションするために、公園全体ではゴルフ場ならではの場所のまとまりや、遠くに延びる視距離など環境をできるだけ活かし、高原らしい魅力を大切に、効果的な介入を心がけて利活用計画から設計監理まで一貫してデザインしました。

地形は極力改変せず、そのままの緑地をゆったりめぐる園路を設けました。既存の傾斜に沿わせてできるだけ大きく公園全体を感じられるように、多少の勾配や凹凸はそのままに森を抜け、池をまわり、小川を渡る、リノベーションだからできる、おおらかで豊かな蒜山の環境を体験できます。

広大な公園の中で過ごす時間の、拠り所になるように3棟の東屋とバーベキュースペース、トイレを配置しました。小さな木の葉のような屋根が木々の合間に見え隠れし、風景の先へ誘います。建物は鉄骨の柱でCLTパネルの屋根を支える構成です。しっかりと鉄骨で支えることで、積雪の多い蒜山地域でも、風通し良く明るい東屋ができました。蒜山地域に多い赤い屋根が、緑の中に映えています。

既存のゴルフクラブハウスは、内部を改修するとともに、外に大きなテラスと庇を設け、パークセンターとしてリノベーションしました。光を受けるCLTの天井が内外をつなぐ、大きな木の下のレストスペースを作り出し、公園での滞在を支える拠点としました。

築40年を超えるクラブハウスは、しっかりした木の骨組みや厚みのある壁・天井の内部を活かし、痛みの目立つ外部は適切に補修して再生しました。特徴ある大きな木の庇がつくことで建物の輪郭線を変え、リニューアルを印象付けています。

既存のカウンターと新しいキッチンの幕板部分は、隣接地で生産された珪藻土をそのままの色で用いて左官仕上げとしました。もともとこの場所が、珪藻土の掘削跡地に整備されたものであり、その産業は蒜山高原が何万年も前に湖であったころの堆積物につながっています。今でも隣地では製造と掘削が行われています。その風景の中で地域の自然と産業の歴史を語る、温かみのある色合いと肌の仕上です。

パークセンター内は内側に建具を追加して室内環境をしっかり改善しました。家具はofaでデザインしたもの、地域の工房がデザイン・製作したもの、市が保管していたCLTボールプールなど、多様なデザインが混在しながら、地域のヒノキの色合いが全体をつないでいます。

夕方以降も公園の時間を楽しめるように、木のあたたかな色合いを見せるライティングで
くつろいだ雰囲気のパークセンター
バーベキュースペースの位置は、ゴルフ場のティーグラウンドでした。コースのグリーンだった場所に向かって、視線が延びていきます。大きく育った松の間の小高い場所に折れる屋根を重ねて場所を作り、洗い場とテーブルを設えました。


遠くの山並みまでまっすぐに見通す風景を、屋根の折れ方と重なりで切り取りながら
より方向性を強めています

屋根の高低差が居場所に抑揚をつくります


CLTの屋根とベンチが大きな居場所をつくります

さんざテラスから北池、東屋、草の広場を経て蒜山三座の山並みへ
近景から遠景まで要素がつらなることで奥へと導きます

園路を歩くと時々に現れる木の屋根は、お互いに人の存在を感じさせながら
折り重なるように先へ誘います

風景に開く屋根と見守りのための日陰や座面を設えた東屋は、遊びの拠点となります

広大な公園の中で、遠くに見える屋根の配置によって遊び場をゆるく囲い
親しみやすいスケールにまとめます

地形をそのまま活かしたスロープなど、ランドスケープと調和する遊びの設えです

土地の起伏と木、コンクリートの組み合わせと配置だけで、動きのある遊びを誘います









高原にある閉鎖されたミニゴルフ場を市民のための公園にリノベーションするプロジェクトは、既存の要素を丁寧に読み解き、その魅力をみつけて、徹底して活かすことで、気持ちよく、誰もがのびのびと遊び過ごせる場所として実現しました。

(※)
	




















































































屋根を折ったことで屋根版CLTはt120と薄くなり、軽快な印象を作っています。
奥へ広がるロビーは執務空間と大きなCLTの壁で仕切られています。安定感のある厚みのある木の壁です。金物は隠さずに見せるようにディテールを丁寧に調整しています。建った後も、建物の作り方がわかる構成です。
カウンター内側からは北側の山並みが、来客側からはプリーツの三角形から電車や緑の景色が見える、開放感のある接客スペースです。
接客カウンターもCLTの積層面が見えるように作りました。壁の小口はできるだけ見えるように構成し、CLTの厚みや木の重なり具合が見えるように気を配っています。 
北側はCLTの屋根版を在来木造の軸組みが支えていることがよくわかります。ガラスを通して内外がつながる雰囲気は、まちに開くこれからの信金のポリシーを表しています。
暮れ始めると、北側の山並みがガラスに映り、その向こうに大きな木の壁が見えます。
 
夜には木の温かい色合いに満ちたロビースペースが見え、通りに信金の存在と、その場所がめざす温かさを伝えてくれます。
すぐ南側を鉄道がとおる敷地。上空からの写真ではプリーツ部分の長さがよくわかります。この距離を1枚もののCLTで飛ばしています。それが両端だけで支えられているのは、大判のCLTとそれを折る建築の工夫のたまものです。
施工中には構造見学会も行いました。島根大学の学生さんや企画設計施工など建築の専門家など多くの方に見学していただけました。すぐそばを鉄道がとおる難しい敷地でのCLTの建て方も、丁寧な制作打合せと現場の手配でスムーズに進みました。























築20年弱の保健福祉センターとして建てられた既存建物は立派なRC造
保健のための調理実習を想定して設計された既存調理室は学校の調理室のよう
調理室はキッチンスペースにミーティングスペースを隣接し、廊下を挟んで隣の部屋からもお互いの活動が見える関係です。
楽しみながらグループで作業ができるように、大きなアイランドキッチンを設えました。
受付の場所はエントランス脇から正面に移動しま、開閉できる大きな建具を設えました。入口から見えやすく、来訪者を迎える配置とデザインです。保健福祉事務所は居ながら工事とし、執務スペースと受付は先行引き渡ししてスムーズに業務を継続していただくことができました。
消防車庫は大きな空間を鉄骨造で合理的にシンプルに構成しました。